住んでるアパートの排水管がぶっ壊れてたようで、僕の体の汚れを落とした水や僕の排泄物を流した水が少しずつ溜まっていき、階下の人の部屋の天井をぶち破ってめちゃくちゃにしたらしい。
大変でしたねって感じだ。申し訳ない気持ちもあるけど僕は普通にシャワーを浴びたり普通に排泄をしてただけで悪いのはこのアパートの管理業者なので、階下の人の部屋が僕の体の汚れを落とした水や僕の排泄物を流した水まみれになっても大変でしたねとしか言いようがない。
火曜日に修理業者が来て僕の部屋のトイレの壁をぶち抜いて排水管を修理していた。半日トイレを使えず、恋人といちゃいちゃできずで、代わりに管理業者から貰ったものは水色のハンドタオルだった。いらねえ。菓子折りかデリヘル嬢連れてこい。
修理が終わり、僕は修理業者にヘコヘコお礼を言って学校に行った。僕は何も困ってないのにトイレの壁をぶち破られて何にお礼を言っていたのかを考えながら授業を受けた。
帰宅して冷凍していたご飯をレンジにいれてチンした瞬間、トイレのタンクとつながっている排水管が吹っ飛び、一瞬でトイレが水浸しになった。僕は混乱し、びしょ濡れになりながら排水管をつなげ、5分くらい放心してから水浸しになったトイレを拭いた。
必死に自分がその日にした悪いことを思い出し、ただ神様に謝るほかなかった。ごめんなさいトイレの神様、これからは週一ではなく毎日掃除しますから。
トイレを綺麗にしてご飯を食べてシャワーを浴びて水を飲もうと台所の蛇口を捻ると、トイレのドアに何かが勢いよく打ちつけられてるような音がした。アレだ。
そこからさっきよりも手際が良かった。びしょ濡れになりながらも水道管をつなげ、トイレを拭き、濡れた服を脱いでシャワーを浴びた。兎に角さっさと寝たかった。シャワーからあがると、トイレが水浸しになっていた。
どの部屋であれ水を出したらこうなるのか?と思い、とりあえず排水管を押さえたままトイレを流してみた。排水管がすごい強さでこちらの手を押しもどそうとする感覚が伝わってきた。神の怒りだ。人間がどうこうできるものではない。僕はびしょ濡れになった。
もうやめよう。体を拭いて寝てしまおう。トイレがしたくなったらコンビニに行けば良い。朝一で業者に電話して直してもらおう。菓子折りだ。おいしいクッキーか何かが食べられる。嬉しいことだ。高級なお菓子は久しぶりだもの。布団に入り目を閉じれば、それだけで菓子折りが手に入るんだ。さあ眠ろう。
まだ空も暗い4時頃、物音で目が覚めた。
もう駄目だった。
神は神を信じない人間を許しはしない。トイレの神様をバカにし続けた僕がどんなに祈ろうと、それが許されるはずがなかった。
僕が何をしても、何もしなくても、排水管は吹き飛び、トイレは水浸しになる。それから業者が営業を始める時間になるまで、僕はトイレに座り、排水管を押さえていた。
朝9時半頃、管理業者が来た。手ぶらで。
一緒に入ってきた修理業者は昨日来た業者と一緒だった。修理道具以外何も持っていなかった。
一度神に背いた者に与えられる菓子折りなんてものはない。
多分普通に学生だから舐められてただけなのだろうけど本当に限界だった僕は何も言わずトイレを見せた。
修理業者のおっさんは舌打ちやため息がうるさくて、僕は朝の情報番組を見ながらポロポロと泣く異常者と化してしまった。ため息も舌打ちもこっちがこぼしたい、そんな態度が取れない僕は涙をこぼすしかないのだ。
修理が終わったあと僕はまたヘコヘコお礼を言って修理業者を見送った。頭がどうにかなってしまいそうだった。
昨日の昼頃修理が終わってからまだ怖くて一度もトイレに座ってないしシャワーも友達の家で浴びた。あとびしょ濡れになり倒したせいで風邪をひいた。